ダニイルと一緒に

1月11日に、ダニイル・トリフォノフは初めて来日しました。成田に彼を迎えに行き、ショパン入賞者全国コンサートツアーの前の日までの3日間彼に付き添いました。

1月13日は彼の日本デビューコンサートだったので、事前の練習が必要でした
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仙川アヴェニューホールでのデビューコンサートのプログラムと一週間後のコンチェルトをF308で練習しました。彼は弊社のショールームにある「全モデルのピアノを試弾したけど、どれも素晴らしかった!」と興奮気味に話していました。

これまで色々なコンサートピアニストの練習を聴きましたが、ダニイルは特に音色と表現が中心の練習だったので、聴いていて心地良かった。そして、楽譜を一切使わない・・・

日本の生活が大好きみたい。なんでも食べられました。刺身のつまの大根もお気に入りでした。
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デビューコンサートは大成功でした。チケットは完売で満席でしたが、有名な方々も来て下さいました。スタニスラブ・ブーニン、海老彰子、岩崎叔子、假屋崎省吾さんなど。
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1月22日はオーチャードホールの優勝者コンサート。ダニイルの東京のコンサートですので、弊社のF308を用意しました。ショパンコンクールと同じように弊社の越智晃が調律しました。NHKが録画して、4月に放送する予定です(BS2)。
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やっぱり、良かった!
ダニイルはまだ19歳ですが、世界的なアーティストになりました。3月1日(ショパンの201歳の誕生日)にはショパン・イヤー最後のコンサートをワルシャワで弾きます。ポーランドの作曲家クシシュトフ・ペンデレツキ氏の指揮でショパンのコンチェルト1番を弾きます。ペンデレツキ氏の自作曲も演奏されます。行きたいですが・・・

今後ダニイルは日本でソロ演奏活動を活発にして行くことでしょう。そして、いつか彼は世界的に有名なピアニスト・作曲家になれると思います。しかし、日本のスタートは弊社の小さなコンサートでした・・・このコンサートを企画・開催できたことをとても誇らしく、嬉しく思います。

ショパンコンクールへの道 (11)

コンクール開始前に調律師仲間から「1次審査が特にきつく、段々とゆとりが出てくる」と聞いていました。しかし2次審査が始まるとファイナルまで1日の休みもなく続き、ゆとりが出てくるどころか疲労もピークを迎えていました。思えばホテル⇒ホール⇒ショールーム⇒ホール⇒ホテルを徒歩で移動し、ホールでの仕事以外はショールームでもう1台のピアノの手入れとよく働きました。ワルシャワ到着後ポーランドのディーラーからレンタル用F278 のメインテナンスを頼まれ気軽にOKしましたが、ハンマーのファイリングからダンパーアクションのオーバーホール、イタリア工場から必要なパーツを取り寄せ交換するなど、予想以上に大変な作業でした。
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ポーランドの技術者、マリアンも私の作業に付き合ってくれ、あれこれ手伝ってくれるうちにとても良い関係を築くことが出来ました。マリアンのお父さんもピアノ技術者で、子供の頃からまわりにはいつもピアノがあったそうです。そんな環境から彼はいつから調律師として仕事を始めたかは分からないと言っていました。ポーランドに初めてファツィオリを紹介したのも彼で、パリに行った時に初めてファツィオリピアノと出会い、それ以来ファツィオリを愛して止まない人ですから、今回のショパンコンクールにかける意気込みは凄いものでした。いつも感じることですが、パオロに集まってくる人々は皆こんな人達ばかりですから、私も何の躊躇いもなく、すぐ仲間として仕事が出来るのです。そんな人達の激励もまた私の大きな原動力となり、3次審査の仕事に繋がるのでした。

つづく・・・

黒檀のF228をご覧下さい!

「ショパンコンクールへの道」はまだまだ続きますが、弊社の越智は調律の仕事で非常に忙しいですので、しばらくお待ちください。 新着のゴージャスなピアノをご紹介します!:
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このピアノはF228ですが、Macassar Ebony材(黒檀)の仕上げです。この仕上げはFazioli史上初めてです。 今まで、Fazioliの木目ピアノを造るときは、ほとんど素敵な玉杢の木材を使用しました。「Burr」もしくは「Briar」とも呼ばれ、根っこ近くの木目が非常に複雑なのが特徴です。 たとえば、以下のピアノはウォルナットのBurrです:
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一般のウォルナットより、Burrの高級さはすばらしいですね! 逆に、黒檀は非常にElegantな木材です。特にピアノには昔から使用されてきました・・・そう黒鍵は同じ黒檀ですね。 このピアノを造るために、イタリア工場との色々な相談が必要でした。大きな問題点は化粧板の長さです。F228のボディの長さのために普通より長い化粧板が必要でした。試行錯誤の末、パオロ・ファツィオリ自身も大変喜ぶ出来上がりとなりました。彼の美的センスをくすぐる仕上がりとなり、、これからもっと黒檀のピアノをチャレンジしたいそうです。 しかし・・・第一号は日本にあります!!! 到着したばかりですが、すでにたくさんの方々がご覧になり、感激されました。 ぜひ、一度パオロ・ファツィオリのクリエーションをご覧下さい。そして楽器としての素晴らしさもご体験下さい。 (P.S. 他の写真を 「最新カスタムメードピアノ」 のページでご覧ください!


ショパンコンクールへの道 (10)

1次審査発表の翌日、コンクールはお休みですが各メーカーの調律師は休むことは出来ません。メーカーごとに時間が割り振られ、各々ピアノに向かいます。1次審査のピアノを弾いた感想をそれぞれ4人から聞き、ピアノの調整の方向性を検討します。リクエストもタッチが軽いのを好む人や重いのを好む人、音色に至ってはピアニシモはそのままにもっとパワーを欲しいなどそれぞれでした。幸い4人の審査日が分かれたため、それぞれのリクエストを加味しながら調整することが出来ましたが、参加者にとっては調整後のピアノを事前に試弾する事も出来ず、ぶっつけ本番という状況の中での演奏です。客席から見守る私も演奏開始後の表情や音、終了後に聞いたリクエストを踏まえ、次の審査の為に調整を再検討します。
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こうして5日間に及ぶ2次審査も終わり、直後の21時から23時45分が私に与えられた作業時間でした。その間に2次審査の発表があった為、1次に続き2次の審査発表にも立ち会うことは出来ませんでした。ポーランド人の技術者が作業中の私に結果を伝えにきてくれましたが、4人全員を3次へと後押しする事が出来ませんでした。とても残念でしたが、堂々たる素晴らしい演奏は今でも私の記憶に残っております。

つづく・・・

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