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December 2021| ファツィオリ日記トップ | August 2022
阿久根市民交流センター 風テラスあくね
採用ピアノ | ファツィオリF278 |
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住所 | 鹿児島県阿久根市塩鶴町二丁目2番地 |
施設 | ホール(最大定員541席)、屋外広場、交流室5室ほか) |
設置者 | 阿久根市 |
指定管理運営 | 阿久根市生涯学習課 |
鹿児島県北西部、東シナ海沿岸に位置する阿久根市は、温暖な気候を利用した農業・水産業が盛んな自然豊かな街。ボンタンなどの柑橘類、ウニや伊勢海老などの海の幸も豊富で海水浴や釣りのメッカとしても知られている。2018年にオープンした阿久根市民交流センター(通称「風テラスあくね」)は、特徴あるデザインと優れた音響とともに、九州の公共ホールとしては初めてファツィオリを導入したことで全国的に知名度を上げている。オープン以来、企画・管理・運営に携わってきた岩切氏にホールとファツィオリについて伺った。
阿久根市生涯学習課 自主文化事業等推進岩切 和彦(いわきり かずひこ)氏
独自の設計と優れた音響を誇る「風テラスあくね」
「風テラスあくね」は、540名席の中規模の多目的ホールの他に、打ち合わせや研修室として利用可能な5つの交流室を備える市民のための文化施設である。建物は、その名のとおり風が通り抜け光が差し込む開放的な外観である。「非常に珍しい非対称のデザインは、音響に有利であるだけでなく、目にも心地よいものです」と、話をしてくれた岩切氏もホールと同じように明るく爽やかな雰囲気の持ち主であった。
「このホールは、市民ワークショップを何度も行い、様々な使い方を想定して設計されました。例えば、ロビー自体がパフォーマンスの場として使えるようになっています。また、ロビーの先が舞台になっていて、ロビーの扉を開けると舞台に出られるという、ユニークな設計です」
言葉での説明ではイメージを持つのが難しいが、実際に見せてもらったところ、確かにロビー正面奥の扉を開けると目の前はステージ、その先に客席が広がる。
「この扉は特別な演出効果があります。演者が舞台正面から登場すると客席が湧きますね。通常、お客様はロビーの右奥の入り口から舞台下手に設けられている花道を通って客席に着きます。花道は、ステージの一部としても客席としても利用されます」
花道の壁側は一面ガラスで、黒いカーテンを開けると季節や時刻の移り変わりを感じることができる。客席最上部にもガラスが使われており、自然光をふんだんに取り入れた明るいホールは、風光明媚な阿久根市のイメージそのものだ。さらに、一階席上手から二階席につながるもみあげ席と舞台を取り囲むバルコニー席が、客席と舞台の一体感を生み、親近感が感じられるつくりになっている。
岩切氏は、20代の頃から東京で舞台の照明・音響・大道具など舞台制作に携わり、有名歌手の舞台監督や企業イベントに長年携わった後、故郷の阿久根市でホールの建設計画の時から参画、現在も企画から管理運営に携わっている。ホールの設備面で、氏が強調していたのは音響の良さだ。
「風テラスあくねは、永田音響設計さんが音響設計から一連のコンサルティングに携わっていて、とにかく音の響きが良いホールです。もみあげ席の壁側が音響反射板としての機能も果たしていて、ホール空間自体が細部まで音響効果を計算されたボックスになっています。多機能ホールではありますが、アコースティックの音にもとても向いていると思います。九州の中規模ホールでは有数の音響の良さと自負しています」
プロピアニストの評判で決めたファツィオリ
九州のホールでは初のファツィオリ設置ホールとなった「風テラスあくね」。どのような経緯で選定されたのだろうか。
「私もピアノ選定委員会のメンバーでしたが、ファツィオリの存在を知りませんでした。ヤマハ、カワイ、スタインウェイが主流なので、そこから選ぶことになるだろうと思っていました。ただ、工場やショールームで弾き比べて選ばないとピアノの個体差があるだろう、と話が上がっていた頃に、やはりピアノ選定委員のジャズピアニスト松本圭使さんがファツィオリを知っていて、東京のショールームで試弾してくると。帰ってきて、開口一番『岩切さん、あれは絶対にいい!』とすごい勢いで言われました」
「そこで、私も知り合いのプロのピアニスト数名にファツィオリのことを尋ねてみたのですが、返ってきたのはいい反応ばかりでした。弾いたことのない人も『いいらしいですよ、弾いた人に聞くとすごくいいと言いますよ』と。九州では初めてのファツィオリとなりますし、ファツィオリジャパンからのバックアップも決定の後押しとなり決まりました」
阿久根市では、ふるさと納税の返礼品としてファツィオリの演奏体験や市民向けの試弾会を行うなど、積極的にファツィオリの存在を市内外にアピールしている。
「ピアノ愛好家の方からもプロの方からも、『音に引きこまれる、やっぱり違いますね』と絶賛されます。ファツィオリがあるから阿久根市に来てくれる演奏家も多いですし、録音で使う方や、最近では国際ピアノコンクールに応募する方が練習や録画のためにいらっしゃいます。ルービンシュタインやショパンコンクールでファツィオリでの優勝者・上位入賞者が次々出てきていますし、ピアニストなら一度は弾いてみたいピアノではないでしょうか」
阿久根市から1時間半ほどかかる鹿児島市から、試弾会や練習に来るケースが半数もいるそうだ。「ファツィオリにはそれだけの価値があるし、今後さらに演奏機会を求めるピアニストが増えていくでしょう」
オープンから4年目を迎えた「風テラスあくね」。最後に、今後の活動について聞いた。「大人には癒しを、特に子供たちに感動や驚きを与えるものを提供していきたいです。阿久根は共稼ぎの家庭が多く、子供達を文化的な場に連れて来るゆとりが少ないのが現状です。今は、パソコンや携帯電話で簡単に娯楽を手に入れられますが、感受性が強い子供時代に本物の音楽や芸術に接することはとても大切な経験です。音楽ってすごいな、気持ちいいなと思う経験。そういう何かがあれば、大人になった時に生活にリズム感が生まれたり、ハッピーな気分にもなれます。本物との出会いは人生が変わるくらいの大きな経験です」
岩切氏の子供達への真摯な想い、演者や観客への責任感とホールへの愛情、そしてホールの評判が、有名アーティストが阿久根を訪れる理由であろう。これからも、私たちは様々な場で「風テラスあくね」の名前を目にすることになりそうだ。
レオノーラ・アルメリーニのコンチェルトのリハーサル時に審査員席より舞台を撮影
「リストコンクール」という名称の国際ピアノコンクールは世界にいくつかありますが、オランダのユトレヒトで開催される当コンクールは、1986年(リスト没後100年)に、「リスト・ユトレヒト」という名称に変更され、現在に至ります。
今回は新たな形式をとり、出場するピアニストの現時点での実力を競うというより、プロフェッショナルに磨きをかける側面が強いプログラムになっています。予選で選び抜かれたピアニスト達は一年近くをかけ、マスタークラスや音楽祭への参加を通じて彼らの音楽性を世界中の聴衆に披露しながら成長の機会を提供されます。
第13回リスト国際ピアノコンクール・ユトレヒトは、5段階のプロセスを経て行われています。
セミファイナルラウンド以降は複数メーカーのピアノから選定できる予定ですが、第2次審査はファツィオリピアノ一台のみが提供されました。
ここでは便宜上コンクールの名称を使用しましたが、実際は、タイトルから「Competition」という単語は外され、「Liszt Utrecht」が正式名称となっているほどピアニスト育成に重きを置いた内容となっています。出場者には出演料などが支払われるなど、様々な面で他のコンクールとは異なっています。
詳細に関してご興味がある方は、公式サイトの説明動画をご覧ください。
Liszt Utrecht 2022 (YouTube 英語)
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