福井県町村会のふくい自治時報月旦評に、同ホールで行われたルービンシュタイン入賞者ガラ・コンサートのオールラウンドな紹介が掲載されました。ピアニスト、ホール、弊社関係者一同にとっても,とても感激的な一夜でしたので、ここにご紹介します。
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"幻" といわれるイタリア製のピアノをルービンシュタインコンクールの上位入賞者が演奏すると聞いて、美浜町生涯学習センター「なびあす」まで 出かけた。音楽の知識に乏しいが、同コンクールの最終審査では高級ピアノの代名詞、スタインウェイとイタリア製のファツィオリのピアノが選 べるようになっていた。フィナリストとなった6人のうち5人が後者を選んだという。聞いたことのないピアノだが最高機種のファツィオリF308はわが国のホールでは美浜が初めて導入したという。その音色を聴いてみたくなった。しかも奏者は世界的なコンクールの1、2位と聴衆賞を受賞した3人。それだけでも行く価値はある。ピアノについてはよく知らないので少し調べてみた。ファツィオリ F308は奥行きが3メートルを超える世界最大のピアノで、迫力ある音と長くなった低音域の弦から生まれる倍音は驚愕するものがあると書かれていた。
どんなピアノか楽しみにして美浜に向かった。
会場の生涯学習センター「なぴあす」
は2012年に完成した施設で図書館なども併設した県内有数のも のだ。文化ホールは489席の中規模だが、
ホール全体が反響板で包まれ3人の演奏家が奏でる響きは、
これまで聴いた音色とは一味違っていた。
べートベンの重厚感あふれる曲から、
現代音楽と幅広い曲目が演奏された。
いずれも深みのある響きに酔いしれることができた。
アンコールに応えて3人 並んでの連弾を披露したのには驚いた。
連弾は2人と決まっているものと思っていた。
F308の特性生かそうとしたのだろう。ピアノには足で 操作するペダルがある。通常は3本までだが、
美浜のピアノには4番ペダルがあり「
音色を変えることなく音量のみが小さくなる」ことが特徴。
3人での連弾はピアノの能力を最大限引き山し、
これを聴くことができ、うれしくなった。
会場が感動で包まれたことは言うまでもない。
嶺南だけでなく福井市など嶺北からも数多く訪れていた。
県外からも演奏会のことを知り、駆けつけた人もいた。
国内では聴けるところが限られている ピアノがなぜ、美浜町にあるのか不思議だった。
帰り際ロビーであいさつを交わしていた山口治太郎町長に尋ねた。
すると「美浜町出身で在住のオ ペラ歌手、野原広子さんが推薦してくれました」
との答えが返ってきた。 一台のピアノにも地元とつながるエピソードがあった。
野原さんはイタリア のフィレンツェで活躍、
現在は故郷の美浜町を拠点に活軌している声楽家だ。
イタリア時代に知ったピアノの素晴らしさをふるさとに伝えてくれ
た。
緑という点では演奏会を後援した駐日イスラエル大使館から文化担
当のニール・タルクさんが駆けつけ、
ルービンシュタインコンクールがエル サレム(「注」実際にはテル・アビブ)
で開催されるようになったいきさつなどを紹介した。
演奏会の前にユダヤ人に命のピザを発給した杉原千畝関連の展示を
している敦賀ムゼウムを視察し「日本人の温かさに触れた」
と話していたのも印象に残った。
世界でも数少ないピアノを生かした音楽祭や学生向け合宿など全国
から人を呼び、
まちを元気にする起爆剤に使えるのではと思いながら帰途へのハン
ドルを握った。