いま日本へ帰国する飛行機の中で、ブログのつづきを書いています。本来であれば開催期間中にアップ出来れば良かったのですが、予想以上の不規則な生活の為、何よりも睡眠を最優先にしておりました。とはいえ睡眠が取れずの日や取れても1時間から最高でも4時間半という生活の繰り返しでした。そんな生活うえ、仲間の技術者は1次審査の途中で体調を崩し、ドイツへと帰国してしまいました。そんな状況から体調管理には十分気をつける日々でしたが、最も大事なことは自分を支える精神力だったかもしれません。
参加者の演奏順は事前のくじ引きで決定されます。この演奏順は1次審査からファイナルまで特別な事がない限り守られます。審査が段階的に進むにつれ、人数は半分ずつに絞られていきます。ファツィオリを選んだ参加者の順番はTRIFONOV→VENEZIANO→WATANABE→DUMONTといった順番になりました。選んでくれた参加者の数こそ一番少なかったですが、これをメリットとして考えると常に良い状態の楽器を演奏者に提供出来るという事です。この責任は私が最後まで全うしなくてはいけません。ホールの音響は日本のホールと比べるとかなりデッドな印象です。ピアノ選定時の4人の感想から、1次審査までに音の調整が必要と考えました。作業時間は深夜の4時間だけですが、日中から頭の中で作業の計画をたてていましたので、有効的にこの時間を使うことが出来ました。普段であれば1日かけて行うような作業でしたが、こんな状況の時は何か別の力が働くのかも知れません。
つづく・・・
昼夜の調整を終え、いよいよピアノ選定の始まりです。78人が各人15分ずつ、延べ4日間のスケジュールです。この時間はもっとも各メーカーが固唾をのむ時でもありますが、
事務的に淡々と進行し参加者が自分のピアノを決定します。既に決めてある人はこの15分は練習の時間となり、まだ決めていない人はあれこれと各ピアノを弾いていきます。やはりファツィオリは参加者にとって他の3社に比べると圧倒的に弾いた経験が少なく、全く触れない人やサラッと弾いて次のピアノに移動してしまう事が多く、その光景を目の当たりにしたパオロの気持ちを考えると、とても辛い時間でした。私は既に似た光景を高松で経験していましたので、常に前向きに気持ちを持つ様に心がけることが出来ましたが、挫けそうな時もやはりありました。とはいえ結果的に参加者4人に選んで頂き、後はピアノの状態を万全にし、ファイナルまで後押しするのが私の使命と考えました。これまではメーカーの競い合いという雰囲気でしたが、これからはピアニストのコンクールの始まりです。ここにファツィオリを選んでくれた参加者の方々をご紹介いたします。
Francois DUMONT (France)
Daniil TRIFONOV(Russia)
Irene VENEZIANO(Italy)
Yuri WATANABE(Japan) (渡辺ゆりさん)
この方々はやはりファツィオリの演奏経験が多いことから、安心して選んでくれました。
もっともっとファツィオリを演奏出来る環境を多くすることが、大切なのでしょう。
初参加ですから、まだまだこれからです!!!
つづく・・・
ワルシャワへ到着後、右も左も分からない場所のうえ、深夜から早朝の仕事のサイクルで昼夜の感覚まで麻痺したまま時間ばかりが過ぎていきました。昨夜遅く一次の結果が出て、早朝の仕事を終え、ホテルの自室でやっと一息つけてところです。とはいえ今晩も0時まで4時間の仕事が控えております。前回のブログの更新から状況も刻々と当然の如く変りました。ワルシャワ到着後すぐ"これこそ"のピアノと対面しました。とても良い楽器でしたが、ホール搬入日の予定も繰り上がり調整時間の確保も困難なうえ、とても新しい楽器ということもあり、やはり先月にイタリアで仕上げたピアノで臨むことにしました。とはいえ、このピアノも新しいのですが・・・。いよいよフィルハーモニーへの搬入です。ステージのある3階までは階段を5,6人で担ぎあげ、ステージへはまるでスキージャンプ台の様なスライダーで下から滑り上げる方法でした。とても見てはいられない光景でした。
無事ステージに搬入後は各社6時間の調整です。この調整から深夜から早朝の作業の繰り返しの始まりで、常に頭の中をかき回されるような感覚の始まりでもありました。
つづく・・・
工場の人々の中にはファツィオリ創業当初から働く人が現在パオロを含め4人います。
創業当初は6人という小さな小さなピアノ工房でした。その中の2人は既に亡くなり、残る3人はパオロと共に現在のファツィオリを築き、これまでのファツィオリの変遷を昨日の事の様に話をしてくれます。そんな人達ですから、パオロの気質や性格もとてもよく理解し、帰り際に私が聞いた意味深な言葉もそんな人達故に、分かっていた事なのだと思います。つい先日また電話で「これこそショパンのピアノ、ワルシャワへはこのピアノと先日選んだピアノを持って行く」と。「また来週来なくてはいけなくなるかもよ」とは既にこの事態を予想していたのでしょう。30年もの間、パオロの「最高のピアノを造る」という情熱にずっと向き合って来た訳ですからね。パオロを支えるこんな人達もまた、私がファツィオリに惹かれる理由の一つです。これでショパンコンクールのピアノが決定しました。私がワルシャワへ到着次第、その"これこそ"というピアノと向き合わなければなりません。どんな凄いピアノなのか今からとてもワクワクしています。今回のブログではショパンコンクールへのパオロの情熱、その情熱に向き合う工場の人々の様子などを少しではありますがご紹介することが出来ました。まだまだファツィオリを知る方々も少ないかも知れません。ましてやコンクールのピアノ選びでは、触れてもくれない参加者の方も目の当たりにしてきました。しかしショパンコンクールに参加されるピアニストの方々に、ぜひそんな想いの詰まったピアノを試して頂ける事を願って止みません。いよいよ来週から私のワルシャワでの活動が始まります。それではいざワルシャワへ!(つづく・・・)
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