ショパンコンクールへの道 (7)

昼夜の調整を終え、いよいよピアノ選定の始まりです。78人が各人15分ずつ、延べ4日間のスケジュールです。この時間はもっとも各メーカーが固唾をのむ時でもありますが、
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事務的に淡々と進行し参加者が自分のピアノを決定します。既に決めてある人はこの15分は練習の時間となり、まだ決めていない人はあれこれと各ピアノを弾いていきます。やはりファツィオリは参加者にとって他の3社に比べると圧倒的に弾いた経験が少なく、全く触れない人やサラッと弾いて次のピアノに移動してしまう事が多く、その光景を目の当たりにしたパオロの気持ちを考えると、とても辛い時間でした。私は既に似た光景を高松で経験していましたので、常に前向きに気持ちを持つ様に心がけることが出来ましたが、挫けそうな時もやはりありました。とはいえ結果的に参加者4人に選んで頂き、後はピアノの状態を万全にし、ファイナルまで後押しするのが私の使命と考えました。これまではメーカーの競い合いという雰囲気でしたが、これからはピアニストのコンクールの始まりです。ここにファツィオリを選んでくれた参加者の方々をご紹介いたします。

Francois DUMONT (France)
Daniil TRIFONOV(Russia)
Irene VENEZIANO(Italy)
Yuri WATANABE(Japan) (渡辺ゆりさん)

この方々はやはりファツィオリの演奏経験が多いことから、安心して選んでくれました。

もっともっとファツィオリを演奏出来る環境を多くすることが、大切なのでしょう。

初参加ですから、まだまだこれからです!!!

つづく・・・

ショパンコンクールへの道 (6)

ワルシャワへ到着後、右も左も分からない場所のうえ、深夜から早朝の仕事のサイクルで昼夜の感覚まで麻痺したまま時間ばかりが過ぎていきました。昨夜遅く一次の結果が出て、早朝の仕事を終え、ホテルの自室でやっと一息つけてところです。とはいえ今晩も0時まで4時間の仕事が控えております。前回のブログの更新から状況も刻々と当然の如く変りました。ワルシャワ到着後すぐ"これこそ"のピアノと対面しました。とても良い楽器でしたが、ホール搬入日の予定も繰り上がり調整時間の確保も困難なうえ、とても新しい楽器ということもあり、やはり先月にイタリアで仕上げたピアノで臨むことにしました。とはいえ、このピアノも新しいのですが・・・。いよいよフィルハーモニーへの搬入です。ステージのある3階までは階段を5,6人で担ぎあげ、ステージへはまるでスキージャンプ台の様なスライダーで下から滑り上げる方法でした。とても見てはいられない光景でした。
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無事ステージに搬入後は各社6時間の調整です。この調整から深夜から早朝の作業の繰り返しの始まりで、常に頭の中をかき回されるような感覚の始まりでもありました。
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つづく・・・

ショパンコンクールへの道 (5)

工場の人々の中にはファツィオリ創業当初から働く人が現在パオロを含め4人います。
創業当初は6人という小さな小さなピアノ工房でした。その中の2人は既に亡くなり、残る3人はパオロと共に現在のファツィオリを築き、これまでのファツィオリの変遷を昨日の事の様に話をしてくれます。そんな人達ですから、パオロの気質や性格もとてもよく理解し、帰り際に私が聞いた意味深な言葉もそんな人達故に、分かっていた事なのだと思います。つい先日また電話で「これこそショパンのピアノ、ワルシャワへはこのピアノと先日選んだピアノを持って行く」と。「また来週来なくてはいけなくなるかもよ」とは既にこの事態を予想していたのでしょう。30年もの間、パオロの「最高のピアノを造る」という情熱にずっと向き合って来た訳ですからね。パオロを支えるこんな人達もまた、私がファツィオリに惹かれる理由の一つです。これでショパンコンクールのピアノが決定しました。私がワルシャワへ到着次第、その"これこそ"というピアノと向き合わなければなりません。どんな凄いピアノなのか今からとてもワクワクしています。今回のブログではショパンコンクールへのパオロの情熱、その情熱に向き合う工場の人々の様子などを少しではありますがご紹介することが出来ました。まだまだファツィオリを知る方々も少ないかも知れません。ましてやコンクールのピアノ選びでは、触れてもくれない参加者の方も目の当たりにしてきました。しかしショパンコンクールに参加されるピアニストの方々に、ぜひそんな想いの詰まったピアノを試して頂ける事を願って止みません。いよいよ来週から私のワルシャワでの活動が始まります。それではいざワルシャワへ!(つづく・・・)

ショパンコンクールへの道 (4)

滞在も4日目の夕方、2台の調整も終了しいよいよ選定となりました。今回調整をした2台と前回6月に調整した2台の合計4台からの選定です。パオロ曰く「ファイナル・セレクション」という掛け声で、ホールにはパオロとヘッドテクニシャンのクラウディオ、テクニシャンのトーマスと私の4人が集まりました。ピアノの選定は今まで数多く経験しましたが、パオロの選定の方法はやはり特別でした。88鍵をパートごとに分け、更に細分化したパートごとの優劣を順位として記録します。この様な方法で行うと自ずと1番を占める楽器が決まってきます。その後各ピアノを演奏し音楽的な観点からも楽器を判断します。現在までの30年間、ピアノが完成する度にこの様な方法で楽器を判断してきたのでしょう。それはそれは真剣な雰囲気の中、選定作業が行われました。結果はやはり最後に調整したピアノが4人の意見として一致しました。ワルシャワへはこのピアノを持ち込んで、コンクールに臨むことに決まり、
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今回のイタリアでの仕事は全て終了しました。帰り際に工場の人々と挨拶を交わしましたが、「また来週来なくてはいけなくなるかもよ」との意味深な言葉。またまたパオロがサプライズを起こしてくれるとは、この時は気付くはずもありませんでした。

(つづく・・・)

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